顧客ヘルススコアは、利用状況や顧客との関係などをまとめて、支援の必要性を判断するための指標です。単にログイン回数を点数にするだけではありません。Gainsightの解説も、点数が何を意味するか、どの入力を使うか、顧客の段階でモデルを分けるかを検討しています。
この記事では、予約管理サービスの3入力を使う架空の計算例を示します。支援対象を選ぶための説明用モデルで、解約確率を実測したモデルではありません。欠けた情報や重大な障害を総合点だけで処理しない作り方を扱います。
点数をつける前に用途を決める
「今週、どの顧客へ何を確認するか」を決められる点数にします。
まず対象をそろえます。導入直後の顧客と、運用が定着した顧客では、利用が少ない理由が異なります。ここでは契約後3か月以上の有料顧客を対象に、直近30日の利用と支援状況を確認する設計にします。これは標準の期間ではなく、サービスの利用周期に応じて変更する条件です。
Gainsightのスコアカード説明では、数値などの採点方式、入力項目、その重みを設計します。重みを決める際は、取得のしやすさよりも、顧客が達成したい仕事との関係を確認します。利用回数が多くても、予約が正しく処理できていなければ、成功した状態とは限りません。
顧客の目的をつかむには、カスタマーサクセスの基本を踏まえ、顧客と「使えるようになった」の具体的な状態を共有してください。
3つの入力を同じ100点へそろえる
利用、成果、未解決の問題をそれぞれ0〜100点へ換算します。
架空の予約管理サービスで、次の採点を試すとします。利用と成果は直近30日を対象とします。未解決の問題は、受付日にかかわらず、その30日間の末日時点で残っている件数を数えます。「成果」は、同じ直近30日の開始日・終了日について顧客と合意した予約処理目標の達成率であり、売上成長率ではありません。どの欄も、記録から確認できた数値だけを入れます。
| 入力 | 説明用の採点ルール | 重み | 確認する記録 |
|---|---|---|---|
| 利用 | 利用予定者に対する実利用者の割合を点数化 | 40% | 対象者名簿と操作記録 |
| 成果 | 予約処理目標に対する完了数の割合を点数化、100点が上限 | 40% | 合意した目標と処理完了記録 |
| 未解決の問題 | 未解決0件は100点、1件は50点、2件以上は0点 | 20% | 問い合わせの分類と未解決記録 |
利用予定者が10人で実利用者が8人なら80点です。予約処理目標が100件、完了が60件なら成果は60点です。未解決件数の区切りは説明用です。同じ1件でも、業務停止と操作質問は重さが違います。
重み付き計算と支援の選び方
総合点は各入力の点数に重みを掛け、その合計で算出します。
この架空例で、顧客Aは利用80点、成果60点、未解決50点でした。総合点は80×0.4+60×0.4+50×0.2=66点です。重みの合計は1.0です。Excelでは、この3点をB2・C2・D2へ入れ、E2に =B2*0.4+C2*0.4+D2*0.2 と入力すると同じ結果になります。
この試験モデルでは、80点以上は通常確認、50点以上80点未満は停滞理由の確認、50点未満は担当者との状況整理の候補とします。66点のAには、未解決の相談内容と予約処理が進まない理由を聞きます。点数の境界は予測性能を検証した値ではありません。
顧客Bが総合90点でも、処理が止まる重大な障害が1件あるなら、総合点とは別に対応します。休業中の顧客なら、点数が低くても利用する機会がなかった可能性があります。点数の内訳と事情を確認して、支援を選びます。
欠損と古い情報をどう扱うか
未取得の情報を0点にせず、確認が必要な状態として表示します。
利用予定者が0人、予約処理目標が0件、または目標が未合意の場合は、割合の点数を計算できません。入力を0点に置き換えず、未算出の理由を残して顧客と確認します。
同じ架空例で、顧客Dは利用80点、成果が未取得、未解決50点でした。成果を0点にすると42点になり、実際の状態を過度に悪く見せます。残りの重みだけで割り直すと70点ですが、Aの66点と同じ条件で比較できません。この説明用モデルでは総合点を未算出とし、「成果未取得」と表示します。
| 状態 | 記録する内容 | 次の確認 |
|---|---|---|
| 入力がない | どの欄が未取得か | 取得方法と担当を決める |
| 情報が古い | 最後の確認日と対象期間 | 最新の状態を確認する |
| 分母が0・未合意 | 予定者や処理目標が0、または決まっていない | 顧客と対象・目標をそろえる |
| 重大な問題がある | 内容・影響・対応責任者 | 点数に関係なく対応を進める |
相談件数が少ないことも、一律に良い状態を意味しません。使っていないため問い合わせがない場合があります。顧客の言葉を確認するときは、顧客の声(VoC)の整理と利用記録を合わせて見ます。
解約との関係を確かめる
同じ顧客群と将来の期間を決め、支援用の点数が判断に役立ったかを確認します。
検証方法を、架空の数値で考えてみましょう。月末時点の点数を保存し、その時点で契約中だった顧客の翌90日を観測します。低得点群20社中4社が解約、高得点群80社中4社が解約なら、率は20%と5%です。低得点群を多く支援した場合は、両群で支援内容が異なるため、この差だけでは点数の予測性能を判断できません。どの支援を行ったかも記録して比較します。
入力や境界を決めた期間とは別の期間でも確認します。解約率だけでなく、低得点なのに問題がなかった顧客、高得点なのに解約した顧客も調べます。点数で見落とした相談、顧客層の違い、取得漏れを整理してからルールを修正します。少数の解約だけで精度が高いと判断しないでください。
この架空モデルの計算結果だけでは、実際の解約予測にどれだけ役立つかは判断できません。業種共通の合格点や最適な重みも、この例からは決まりません。
まとめ
ヘルススコアは、顧客の状況を確認して支援を選ぶために設計します。
- ✓対象顧客、観測期間、点数の用途を先に決めます。
- ✓入力の分母と採点ルールをそろえ、重みを明示します。
- ✓欠損・情報の古さ・重大な問題は別に表示します。
- ✓将来の別期間で見落としを確認し、ルールを更新します。
まず3入力の取得元と担当を記し、少数の顧客で計算と支援判断を試してください。総合点だけを配るより、66点になった理由を説明できる状態を目指します。


