カスタマージャーニーは、顧客が目的を達成するまでにたどる一連の体験です。その行動や考え、感情を見える形に整理したものがカスタマージャーニーマップです。Nielsen Norman Groupは、ジャーニーマップを、人が目標へ向かうプロセスの可視化として説明しています。Journey Mapping 101

作るときは、誰のどこからどこまでの体験かを決め、顧客の行動・接点・感情・課題を根拠と一緒に記入します。この記事では、説明用のジムの例と同じ列の空欄表を使い、調べる前の仮説を調査後に直すところまで示します。


カスタマージャーニーマップの記入例

まず「探す→予約する→来店する」という流れに、顧客が気にしていることを添えます。

説明用の架空例として、仕事帰りに通えるジムを探す人が、体験を予約し、初回利用を終えるまでを整理します。会社側の目的は「体験予約から来店までの迷いを調べること」、顧客側の目的は「生活時間に合い、続けられそうな運動場所を見つけること」です。期間は、探し始めてから初回利用までを対象にします。

以下のジムの例はすべて作成方法を示す架空の設定で、実在する顧客の調査結果ではありません。まず三つの流れで全体をつかみ、作成手順の中で根拠付きの詳細表へ広げます。

短い流れ顧客がすること気になることの例
探す仕事帰りに通えるジムを比べる最終受付に間に合うか
予約する空き枠を選び、体験を申し込む予約が成立したか
来店する持ち物と入口を確かめ、体験する当日何をすればよいか

タッチポイントとは、顧客が情報や人、サービスに触れる接点です。検索、SNS、広告、テレビCM、店舗、電話などから、対象の体験に関わるものを選びます。接点を用意した企業側の予定と、顧客が実際に使った接点を分けてください。

顧客の行動は常に一直線に進むとは限りません。Salesforceの解説も、比較に戻る動きや、段階を飛ばす動きを扱っています。カスタマージャーニーの解説 この例でも、予約後に口コミを調べ直す人や、電話してからサイトを見る人は別の経路として追記します。すべての人が表の順序を通ったと解釈しないでください。


作り方を5つの手順で確認する

対象と範囲を固定し、情報を集めてから、行動・心理・改善課題の順に整理します。

1.誰の、何を達成する体験かを決める

「すべてのお客様」から始めず、行動が異なる人を分けます。ジムなら「初めて見学する人」と「すでに会員で予約を変更する人」は、達成したいことが違います。必要なのは、年齢や趣味を細かく創作することより、目的、利用状況、制約、判断材料を確認することです。

記入例は、対象者=初めて利用を検討する人/目的=仕事帰りに通えるか判断する/開始=候補を探す/終了=初回利用を終える/今回扱わない範囲=入会後の継続や退会。このように、対象外も一行で決めておきます。

顧客像の整理が必要なら、ペルソナの作り方を補足に使ってください。すでに十分な顧客像がある場合は、今回の目的に必要な項目だけ取り出せます。

2.行動の記録と顧客の言葉を集める

問い合わせ履歴、予約や購買の記録、画面操作の観察、インタビューを照合します。「送信ボタンを押した」は行動記録で確かめられても、「不安だから押し直した」という理由まではログだけで確定できません。理由を知りたいところに、顧客へ尋ねる問いを置きます。

「体験予約の直前に何を確かめましたか」「途中で別のページへ戻ったのは、何を知るためでしたか」「予約後、来店までに分からなかったことはありましたか」と、具体的な出来事を聞きます。「料金が不安でしたよね」のように、答えを誘導する聞き方は避けます。

うまく進めた顧客だけでは、途中で止めた理由を把握できません。調べた対象と、まだ調べていない対象を表に残してください。聞き方を詳しく決めるときは、顧客インタビューの進め方が補足になります。

3.フェーズと接点を並べる

集めた情報から、顧客の目的が切り替わるまとまりを作ります。「認知・検討・購入」は使える候補ですが、必ずこの名前に合わせる必要はありません。予約変更なら「変更条件を調べる・変更を申請する・結果を確認する」など、実際の行動に合わせます。

同じ電話や公式サイトが複数のフェーズに出てきても、そのまま書きます。顧客が比較のために電話する場合と、当日の入口を確かめるために電話する場合では、知りたいことが違うためです。

4.行動・感情・課題に根拠を付ける

記録から確認できる内容は「確認した情報」、説明のために考えたことは「仮説」、まだ材料がないことは「未確認」と書き分けます。顧客の発言は発言として記録し、担当者の解釈と混ぜないでください。

感情を無理に点数にせず、「次に何をすればよいか分からない」「期待した説明を聞けた」のように言葉で残す方法もあります。数値の折れ線を使うなら、誰が、どの質問・尺度で、いつ評価したかを説明できるようにします。担当者が付けた仮の点を、顧客の測定結果にはしません。

手順1〜4を反映した詳細な記入例

冒頭の三つの流れを、探し始める・比較する・予約する・来店を準備する・体験する・初回利用を終える、の六つに分けました。手順1の対象と範囲、手順2の記録と発言、手順3のフェーズと接点、手順4の根拠の区別を各列に対応させています。以下の発言・ログ・記録IDも架空の資料で、「発言あり」「ログあり」は例の中での情報区分です。

フェーズタッチポイント顧客の行動感情・考えていること課題根拠・確実性次に確認すること
探し始める検索、SNS投稿駅名と営業時間で候補を探す「仕事が終わってから間に合うか」営業終了時刻と最終受付の区別がつかない架空インタビューI01の発言あり。SNS経由の割合は未確認認知経路と検索時に使った言葉を尋ねる
比較する公式サイト、口コミ、電話料金と夜の混雑状況を比べる混雑時にも器具を使えるかが気になる料金は分かるが、利用できる時間の見通しが立たないI01・I02の発言あり。全体への広がりは不明来店しなかった人にも比較理由を尋ねる
体験を予約する予約フォーム、確認メール空き枠を選び、送信する「予約できたはずだが、メールが来ない」完了画面で予約成立を確認できない架空ログL01に送信完了。メール未着はI02の申告のみ配信記録と迷惑メールの状況を確認する
来店を準備する確認メール、地図、電話持ち物、入口、所要時間を確かめる初めての場所に遅れず着けるか不安という仮説当日の案内が複数ページに分かれるページ分散は架空の画面確認S01。感情は未確認持ち物を探す様子を観察する
体験する受付、ロッカー、トレーナー受付後に着替え、運動する「最初に何をするか分かって安心した」見学後にひとりで再現できるかは不明I03の発言あり。継続利用の実態は対象外初回利用後に困ったことを聞く
初回利用を終える受付、案内メール次に利用できる日時と手続きを確認する生活に合うか、費用を含めて判断するという仮説当日の感想だけでは入会しない理由を説明できない判断理由は未確認入会・非入会の双方に選択理由を聞く

5.改善候補を一つ選び、確認方法を決める

困りごとが確認でき、担当者が変更できる箇所から試します。「不安を減らす」で止めず、「予約成立と当日の持ち物を完了画面へまとめる」のように作業へ変えます。ただし、まずメールが実際に届かなかった原因を確かめる必要があります。

この架空例では、フォーム担当が案内を試作し、体験予約をする人に「予約が成立したか」「当日何を持参するか」を確認してもらいます。正しく答えられた人数と迷った箇所を記録します。予約数が増えたかだけでは、案内が分かりやすくなったかを直接は判断できません。


そのまま使える空欄テンプレート

完成例と同じ7列を使えば、情報がないところも次の調査項目として残せます。

対象者:___/顧客の目的:___/自社が調べたいこと:___/開始と終了:___/対象外:___/資料の確認期間:___/作成・更新日:___/更新担当:___。

フェーズタッチポイント顧客の行動感情・考えていること課題根拠・確実性次に確認すること
_____________________
_____________________
_____________________
_____________________
_____________________

行は対象の体験に合わせて増減します。手順4の区別を使い、未確認の欄は次の具体的な質問につなげてください。

改善対象:___/根拠:___/試す変更:___/担当:___/期限:___/対象と確認方法:___/結果確認日:___。マップ本体とこの欄を一緒に更新すると、気づきを作業へ移せます。


調査後に行動と感情を書き直す例

調査で仮説と違う理由が分かったら、感情だけでなく課題と施策も書き換えます。

架空例のジムの担当者は当初、「料金を見た段階で不安が強まり、予約をやめる」と考えていました。しかし、説明用のインタビューI01では「料金は予想どおりだった。終業後に体験へ間に合うか分からなかった」という発言が得られたとします。これは一人の発言であり、全顧客の理由が同じだとは判断しません。

対象項目調査前の初案調査後の修正
顧客の行動料金を見て離脱したと推測料金と最終受付を行き来したと本人が説明
感情・考えていること「高そうで不安」と担当者が推測「料金より、仕事帰りに間に合うか気になった」という説明用の発言を記録
課題価格が高いと断定当人については最終受付と所要時間の情報不足が候補
根拠・確実性社内の印象のみI01の発言。行動ログとの一致、他の対象者への広がりは未確認
改善候補一律に値引きする所要時間と最終受付を分かりやすく表示し、理解できるか試す

一つの仮説が修正されたからといって、価格の問題がなくなったとは限りません。他の顧客の理由も調べ、異なる経路が見つかれば別のマップに分けます。更新日と変更理由を残せば、前の判断がどの情報に基づいていたかをたどれます。


B2BとB2Cで何を変えるか

業種名だけで決めず、利用する人・選ぶ人・費用を承認する人が同じかを確認します。

Nielsen Norman Groupは、一つのマップで誰の視点を描くかをそろえ、異なる対象者の視点は分ける考え方を説明しています。対象者とシナリオの整理

例えば、法人向けの予約システムなら、現場担当者は入力の手間を確かめ、管理者は運用方法を検討し、決裁者は費用を判断するかもしれません。これらを一人の「顧客」の感情として混ぜず、各人がどこで関わり、何を引き継ぐかを整理します。

個人向けサービスでも、例えば家族が調べ、別の家族が利用・支払いをする場合があります。一方、法人の少額購入を一人が短時間で決める場合も考えられます。「B2Bは必ず長い」「B2Cは必ず感情的」と決めず、対象の意思決定と利用状況に合わせて範囲を変えてください。


よくある失敗と修正方法

企業側の販売手順と顧客の実際の体験を混ぜないことが、見直しの出発点です。

失敗見直す理由修正例
広告配信・営業連絡など自社の作業だけを書く顧客が何をして何に困るかが見えない「他社の料金も調べる」「家族に相談する」など実際の行動を追加する
すべての顧客を一本の経路にまとめる利用目的や制約の異なる人の理由が混ざる初回利用と再利用など、行動が異なる対象を分ける
どの業界にも同じ感情曲線を当てる下がる段階や理由を確認していない発言と観察に戻し、根拠のない感情は仮説へ戻す
理想の体験を現状の表に混ぜるすでにできていることと改善したいことが区別できない現状表と改善後の案を分け、変更点を明記する
作成しただけで成果が出たと扱う変更が顧客へ届いたかを確かめていない改善後に同じ対象・課題で行動と発言を確認する

カスタマージャーニーマップは、顧客側の体験を整理するために使います。課題を直すために社内の担当や裏側の処理まで調べる必要が出たら、顧客の行動に対応する業務を別に整理してください。一枚にすべて詰めて読めなくする必要はありません。


まとめ

カスタマージャーニーマップは、顧客の体験と根拠を整理し、次に確かめる課題を決めるために使います。

作成時には、次の順で確認してください。

  • ✓誰の、どこからどこまでの体験を扱うかを決める。
  • ✓行動記録と顧客の言葉を集める。
  • ✓行動・接点・感情・課題を、根拠とともに記入する。
  • ✓改善候補を絞り、担当者と結果の確認方法を決める。
  • ✓調査や試行で分かったことを反映し、更新する。

まず空欄表で一人の対象者と一つの体験範囲を設定し、手元の記録で確認できる行だけを書いてください。残った未確認事項のうち、改善判断に影響するものから顧客へ確かめます。