RFM分析は、最終購入時期・購入頻度・購入金額を組み合わせ、購買行動から顧客を分類する方法です。RはRecency、FはFrequency、MはMonetaryの頭文字です。分類は顧客ごとの施策を考える材料になります。(RFMモデルによる顧客分類の研究)

購入金額が低い顧客をすべて同じ扱いにすると、昨日初めて買った顧客と、半年間買っていない顧客が混ざります。RFM分析では、金額だけでなく購入時期と回数を加え、この違いを整理します。

本記事では指標の意味を整理し、基準日を固定した架空例で、集計から顧客別の施策・評価までを紹介します。


RFM分析の3つの指標

購入時期・回数・金額は、顧客の購買行動の違う側面を表します。

Rは最終購入時期です。基準日から何日前に購入したかで表すと、日数が小さいほど最近の購入になります。Fは、定めた期間内の購入回数です。Mは、その期間内の購入金額です。期間と集計ルールをそろえて比較します。

R・F・Mは、顧客の気持ちを直接測る指標ではありません。頻繁に買っていても満足しているとは限らず、購入金額が大きくても利益が大きいとは限りません。購買行動の分類と、評価・利益の確認を分けることが必要です。


集計する前に条件をそろえる

顧客の識別、対象期間、取消・返品の扱いを先に決めます。

まず、購入履歴を顧客ID(Identifier:識別子)でまとめます。IDは同じ顧客を識別する番号です。氏名だけでは同姓同名や表記の違いを区別できない場合があります。顧客管理の背景はCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)の考え方で整理できます。

次に、基準日と集計期間を決めます。購入日ではなく出荷日を使うなら、その定義を記録してください。この架空例では基準日を2026年10月1日、対象期間を4月1日〜9月30日の6か月とします。以降の数値はすべてこの条件の架空例です。

この架空例では、Fは取消・全額返品を除く注文数とし、一つの注文を一回と数えます。Mは税込商品代金から返品額を引き、送料は含めません。Rの最終購入日も同じ対象注文から取得します。送料や税の扱いに唯一の正解があるわけではなく、比較する全顧客で統一することが重要です。


架空の購入履歴で計算する

元の履歴を顧客単位に集計し、R・F・Mを別々に求めます。

日用品を扱う架空のEC(インターネット上の通販)を想定します。継続購入する顧客と、初回購入の顧客を分けて考えます。顧客Bは、過去の履歴も確認して、生涯の初回購入日が2026年9月29日と分かっている条件を追加します。期間内に1回しか買っていないことだけでは、新規顧客と確定できません。まず、前章の条件で集計した結果を示します。

顧客最終購入日R:経過日数(日)F:注文数(回)M:購入金額(円)
A2026/9/283848,000
B2026/9/29214,000
C2026/6/3093840,000
D2026/9/2011290,000

この例の顧客AのRは、10月1日から9月28日までの差で3日です。Fは対象の注文を8件数えた結果です。Mは商品代金の合計で48,000円です。この例では、平均注文金額も48,000÷8=6,000円と計算できます。Mそのものと平均注文金額は別の数字です。

元の注文明細からF・Mを集計する

集計前の形を、顧客B・Dの架空の注文明細で確認します。各金額はその商品行の税込代金で、送料と返品額はありません。注文全体の合計を各行へ繰り返した値ではありません。「D002・行1」は取り込みの重複、「D003」は取消済みと分かった状態です。

顧客ID注文ID明細行ID購入日商品代金(円)状態
DD00112026/7/1520,000有効
DD00122026/7/1530,000有効
DD00212026/9/2040,000有効
DD00212026/9/2040,000同じ明細の重複
DD00312026/9/2510,000取消済み
BB00112026/9/294,000有効
  1. 対象期間内の有効な注文を残します。D003を除き、同じ注文ID・明細行IDの重複であるD002の2行目も除きます。D001の2つの商品行は別明細なので、両方を残します。
  2. 顧客ID・注文ID・購入日でまとめ、商品代金を合計します。D001は50,000円、D002は40,000円、B001は4,000円となり、1注文1行の表になります。
  3. その表を顧客IDでまとめます。注文の行数がF、注文金額の合計がM、購入日の最大値が最終購入日です。Dは2回・90,000円・9月20日、Bは1回・4,000円・9月29日となり、上の集計表につながります。

ExcelのPower Queryを使う場合も、先に注文単位、その後に顧客単位でグループ化します。顧客単位の集計では、Fに行数、Mに金額の合計、最終購入日に日付の最大値を指定します。操作の基本はMicrosoftのグループ化の説明で確認できます。注文IDだけで商品行を削ると、D001の代金の一部まで失われるため注意してください。

集計表からExcelでRとスコアを計算する

Excelでは、対象条件を満たす購入履歴を用意したうえで、顧客ごとの最終購入日、注文数、金額の合計を求めます。集計表に最終購入日があれば、「基準日−最終購入日」でRの日数を計算できます。基準日は固定セルに置き、現在日付に毎日置き換えない方が、分析結果を再確認できます。

本文の4人をExcelで再現するなら、A列を顧客、B列を最終購入日、C列をRの日数、D列をFの注文数、E列をMの金額とします。見出しを1行目、A〜Dの4人を2〜5行目に入力し、J1に基準日「2026/10/1」を日付として入力します。B列も日付、D・E列は単位を付けない数値で入力してください。

C列を数値表示にし、次の式を入力します。F〜H列は、次章の区切り値を使ったR・F・Mのスコアです。各式を5行目までコピーすると、4人を同じ条件で計算できます。IFは、条件が成り立つ場合とそれ以外で返す値を分ける関数です。

入力先式意味
C2=$J$1-B2基準日から最終購入日までの日数。A〜Dの順に3、2、93、11
F2=IF(C2<=30,3,IF(C2<=90,2,1))R:30日以内は3、90日以内は2、それより前は1
G2=IF(D2>=5,3,IF(D2>=2,2,1))F:5回以上は3、2〜4回は2、1回は1
H2=IF(E2>=30000,3,IF(E2>=10000,2,1))M:30,000円以上は3、10,000円以上は2、それ未満は1

この式は、対象期間に有効な購入があり、元の履歴を正しく集計できた顧客用です。空欄、基準日より後の日付、購入0回の人をそのまま採点せず、別途確認します。生涯初回購入日は、この集計表とは別に過去の履歴から確認します。

IF関数の基本の書式と、複数条件を入れ子にする使い方はMicrosoftの公式説明で確認できます。

Fの数え方を変えたときは、過去の結果と直接比較せず、同じ集計ルールへそろえてから変化を読みます。

この例では、新規のBと継続購入が止まったCで、次に確認すべきことが異なります。金額だけではその違いを捉えきれません。元の履歴がない場合も、この表を例として分類の考え方を試せます。


RFMの区切り値とスコア

区切り値は購買周期と目的に合わせ、根拠を記録して決めます。

この架空例では、分かりやすさのため3段階に分けます。Rは30日以内を3、31〜90日を2、91日以上を1にします。Fは5回以上を3、2〜4回を2、1回を1にします。Mは30,000円以上を3、10,000円以上30,000円未満を2、10,000円未満を1にします。業界共通の基準ではありません。

この条件でAはR3・F3・M3、BはR3・F1・M1、CはR1・F3・M3、DはR3・F2・M3となります。3つを合計して一列に順位付けすると、Bの新規性やCの購入停止が見えにくくなるため、組み合わせを残して考えます。

実務では、顧客の分布や商品の通常の購入間隔を見て区切ります。四半期ごとの購入が普通の商品なら、30日購入がないだけで離反と扱うのは早すぎます。顧客を細かく分けすぎて人数が少なくなる場合は、分類を減らすことも検討します。


顧客別の施策へつなげる

分類名ではなく、顧客に起きている可能性のある状況から施策を選びます。

前章の4人に対する施策案です。購買履歴だけでは購入理由を確定できないため、必要に応じて反応や問い合わせを確認します。

顧客検討する状況施策の例確認する結果
A継続購入しています。購入を妨げる欠品や手順の負担を確認します。継続購入と問い合わせ理由を見ます。
B初回購入の直後です。使用方法や困ったときの連絡先を案内します。初回利用の問題と次回購入を見ます。
C過去には継続購入していました。購入停止の理由を、答えやすい質問で確認します。反応と再購入の有無を見ます。
D最近、高額の購入があります。利用状況に合う案内が必要か確認します。問い合わせ、返品、商品の粗利も見ます。

一律のクーポンが適するとは限りません。顧客が買わない理由が欠品や使いにくさなら、値引きだけでは解決しない可能性があります。理由を確認する方法は顧客インタビューが参考になります。


効果測定と分析の限界

分類の変化だけでなく、施策を受けた顧客の行動と採算を確認します。

施策前に、対象顧客、観測期間、再購入の定義を決めます。再購入率は対象顧客のうち、期間内に再購入した人数の割合として集計します。購入した人だけを分母にしてはいけません。可能なら同じ分類の中に施策を送らない比較群を置きます。

売上から商品原価、値引き、配信や対応の費用を差し引いて見ることも必要です。高額購入が多くても、返品や対応費用が大きい顧客は利益の面で同じ評価にはなりません。RFMのMを、利益や顧客生涯価値の代わりにはしないでください。

購買履歴だけでは、満足度、購入停止の理由、競合での購入は分かりません。購入周期が長い商品や定期的な自動決済のサービスでは、利用状況など別の情報も必要です。RFMは、顧客の理解を完成させる方法ではなく、次に確認すべき違いを見つける方法として使います。


まとめ

RFM分析は、集計条件をそろえ、顧客ごとの状況に合わせた施策を検討するために使います。

  • ✓R・F・Mは、購入時期・回数・金額を表します。
  • ✓基準日・期間・返品の扱いを固定して、比較できる集計にします。
  • ✓新規と休眠を区別し、一律の値引き以外の施策も検討します。
  • ✓評価では再購入の分母と観測期間をそろえ、費用と利益も確認します。

まずは本文の4人の例で、「次に何を確認したいか」を一つずつ書いてみてください。数字から理由を決めつけず、顧客に合う案内や改善を選ぶことが、RFM分析を実務に生かす第一歩になります。