コホート分析は、共通の条件で分けた顧客や利用者を、時間の経過に沿って追う方法です。たとえば初回購入月が同じ顧客をまとめ、その翌月・翌々月の再購入を比べます。Googleのコホート探索の説明でも、同じ特性を持つ利用者群の行動を経時的に確認します。
この記事では注文記録を使う架空のネット通販(EC)事業を例に、初回購入月別の再購入率を計算します。全体のリピート率だけでは隠れる差を確認し、未観測を0%にしない表の読み方を示します。Googleアナリティクス4(GA4)の画面を再現した実測値ではありません。
最初に3つの条件を決める
顧客を分ける起点、経過期間、再購入の意味を先にそろえます。
ここでは起点を「生涯の初回購入月」、経過期間を暦月、再購入を「初回購入の翌月以降に、有効な注文を1回以上完了すること」とします。同じ月に3回注文しても、その月の再購入者数は1人です。取り消し・全額返品の注文は有効な注文から除きます。
対象期間だけを見て最初の注文を初回購入とすると、以前からの顧客が新規群へ混ざります。顧客IDごとに過去の履歴を確認してください。履歴が不足する場合は、「この集計で観測できる初回」と表示し、生涯初回と区別します。
商品ごとの購買周期が大きく違う場合は、同じ月の再購入率を一つにまとめると読み違えます。購入商品や流入経路で分けることも検討しますが、人数が少なくなるため、分母を同時に表示します。
初回購入月ごとの計算例
以下の架空例では、同じ「1か月後」の列で比べ、まだ到達していない列は未観測とします。
説明用の架空の注文記録として、2026年9月30日までの注文記録を使います。初回月は7・8・9月。7月群の1か月後は8月、2か月後は9月です。8月群の2か月後は10月なので、まだ観測できません。分母は各群の初回購入者数に固定します。
| 初回購入月 | 初回購入者数 | 1か月後の再購入者・率 | 2か月後の再購入者・率 |
|---|---|---|---|
| 2026年7月 | 100人 | 8月に30人・30% | 9月に20人・20% |
| 2026年8月 | 80人 | 9月に32人・40% | 未観測 |
| 2026年9月 | 120人 | 未観測 | 未観測 |
この例では、7月群の1か月後は30÷100×100=30%、8月群は32÷80×100=40%です。比率差は10ポイントです。8月群の方が高いものの、広告、商品、価格、顧客層が異なる可能性があるため、施策の効果とはまだ断定できません。
7月群の9月購入者20人には、8月にも買った人と、8月は買わず9月に買った人の両方を含めます。各月に買ったかを見る表なので、30人と20人を足して累計50人にはできません。同一顧客が両方に含まれる可能性があります。
注文記録から表を作る手順
注文を顧客単位へ整理してから、初回月と経過月で人数を数えます。
1. 有効な注文をそろえる
顧客ID、注文ID、完了日、取り消し・返品の状態を用意します。商品明細が複数行ある注文は、注文IDでまとめます。顧客の統合やID変更がある場合も、同一人物を二人と数えない方法を確認します。個人名を集計表へ載せる必要はありません。
2. 顧客ごとの初回日を確認する
架空の注文記録で考えると、顧客Aの有効な注文が7月10日、8月5日、8月20日、9月3日なら、初回月は7月です。1か月後の8月に1人、2か月後の9月に1人と数えます。顧客Bが7月12日と9月9日の2回なら、1か月後は0人、2か月後は1人です。0は観測済みで購入なし、未観測は期間未到達であり、意味が違います。
3. 経過月を計算して重複を除く
経過月は「12×購入年+購入月」から「12×初回年+初回月」を引きます。同じ顧客IDと経過月の重複を除き、その組み合わせを1行にします。Excelの表でも、顧客ID・初回月・購入月・経過月を並べれば、どの列へ入るかを確認できます。
4. 人数を集計し、率を計算する
初回月ごとに顧客数を数え、各経過月の人数を固定した分母で割ります。表を色分けする前に、人数と率が対応するかを確かめます。データ締め日と更新日も書き、到達前の列は空欄や「未観測」で残してください。
GA4のコホート探索との違い
GA4では登録条件・リピート条件・計算方法を設定するため、注文記録の表と同じ結果になるとは限りません。
Googleの公式資料では、登録条件に初回接触やトランザクションなどを選び、リピート条件と日・週・月の粒度を設定します。標準は各期間で条件を満たした人、ローリングはそれ以前の期間も続けて条件を満たした人、累計は、起点から当該期間までのいずれかの期間で条件を満たした人を含めます。コホートの決定はデバイスデータに基づき、User-IDは考慮されません。
この記事の表は顧客IDと有効な注文を使った「各暦月の再購入」です。GA4の初回接触は初回購入そのものではありません。計測同意、複数端末、返品の反映などの条件も違います。数字が異なったら、まず分母とイベントの意味を照合し、片方を自動的に誤りとしないでください。
表から改善の仮説を作る
同じ経過月の差を確認し、差が出た顧客群と取引条件を調べます。
1か月後の再購入が低い群では、商品の利用状況や再購入時期を聞きます。値引きで率を上げる前に、そもそも毎月買う商品なのかを確認してください。行動の背景を調べるには顧客インタビューを組み合わせます。
群の比較と個人への施策は役割が異なります。コホートで問題の多い獲得時期を見つけ、顧客関係管理(CRM)の記録で具体的な顧客状況を確認する使い方ができます。施策を比べるなら、流入・商品・価格・観測期間をそろえ、同時期の比較群も検討します。
まとめ
コホート分析は、起点と経過期間をそろえて顧客群の変化を読むために使います。
- ✓初回の定義、有効な注文、人数の数え方を固定します。
- ✓同じ経過月の列で比較し、未観測を0%にしません。
- ✓各月の再購入人数と累計人数を区別します。
- ✓群の差を施策の効果と決めつけず、商品や顧客条件を確認します。
まず2〜3か月分の初回購入群を選び、人数付きの表を作ってください。色の濃さより先に、分母と観測できた期間を確認すると、次に調べる顧客群を絞れます。


