「顧客維持率という言葉は聞くが、どう計算するのか分からない」

「解約率とは何が違うのか、整理できていない」

「維持率を上げたいが、何から手をつければいいのか迷う」

顧客維持率(リテンションレート) とは、ある期間のはじめにいた顧客のうち、期間の終わりまで取引を続けてくれた顧客の割合 を示す指標です。新規顧客をどれだけ集めても、既存顧客が同じだけ離れていては事業は成長しません。顧客維持率は、その「土台が漏れていないか」を映す数字です。

本記事では、顧客維持率の定義・計算方法・解約率との違い・下がる原因・改善の4ステップ を、順を追って整理します。維持率を「測る」だけでなく、LTVや利益とのつながりまで含めて、CX改善につなげる視点で読み解いていきます。

⏱ 30秒でわかる顧客維持率

  • 定義:期初の顧客のうち、期末まで取引が続いた顧客の割合
  • 別名:リテンションレート
  • 計算式:(期末顧客数 − 新規顧客数)÷ 期初顧客数 × 100
  • 解約率との違い:表裏一体(維持率90%なら解約率10%)
  • 重要な理由:わずかな改善が利益(LTV)に大きく効く
  • 下がる原因:価格ではなく「価値が伝わっていない」ことが多い

顧客維持率(リテンションレート)とは

顧客維持率とは、ある期間のはじめにいた顧客のうち、期間の終わりまで取引を続けてくれた顧客の割合です。この数字が高いほど、顧客が離れずに関係が続いていることを意味します。

顧客維持率は「リテンションレート」とも呼ばれます。サブスクリプション型のサービスはもちろん、リピート購入が前提の事業であれば、業種を問わず重要な指標です。維持率を見ることで、「新規獲得の裏で、どれだけ既存顧客が漏れているか」を把握できます。

計算方法

顧客維持率は、次の式で計算します。

顧客維持率(%) = (期末の顧客数 − 期間中に獲得した新規顧客数) ÷ 期初の顧客数 × 100

ポイントは、期間中に増えた新規顧客を差し引く ことです。これを忘れると、新規獲得の勢いで維持率が高く見えてしまい、「既存顧客がどれだけ残ったか」を正しく測れません。具体例で確認します。

項目数値
期初の顧客数100人
期間中に獲得した新規顧客20人
期末の顧客数110人
顧客維持率(110 − 20)÷ 100 × 100 = 90%

この例では、見かけ上は顧客が100人から110人に増えていますが、既存顧客でみると10人が離れており、維持率は90%です。新規を差し引いて初めて、本当の維持の状況が見えてきます。なお、これは新規顧客が同じ期間内には解約しない前提の基本的な計算式です。より厳密に測る場合は新規顧客の途中解約も分けて扱いますが、まずはこの基本式で推移を追うだけでも十分に役立ちます。

解約率(チャーンレート)との違い

顧客維持率とよく対で語られるのが「解約率(チャーンレート)」です。両者は表裏一体の関係にあります。

指標見ているもの先ほどの例での値
顧客維持率期間の終わりまで残った顧客の割合90%
解約率期間中に離れた顧客の割合10%

シンプルに言えば、顧客数で数える場合、顧客維持率と解約率を足すとおおむね100%になります(維持率90%なら解約率10%)。維持率は「残った側」、解約率は「離れた側」を見ているだけで、表しているのは同じ現象です。なお、契約金額で見る「売上ベースの維持率」では、既存顧客の利用拡大(アップセル)や縮小も影響するため、必ずしも解約率と足して100%にはなりません。まずは顧客数ベースで押さえ、必要に応じて売上ベースも併せて見るとよいでしょう。


なぜ顧客維持率が重要なのか

顧客維持率が重要なのは、わずかな改善が利益に大きく効くためです。新規顧客の獲得には既存顧客の維持より大きなコストがかかるため、顧客が離れずに長く取引を続けるほど、利益は積み上がっていきます。

ハーバード・ビジネス・レビュー誌に発表された古典的な研究(ライクヘルドとサッサー, 1990年「Zero Defections」)では、顧客の離脱率を5%改善すると、利益が25〜85%増える と報告されています(銀行の支店網で85%、保険代理店で50%、自動車サービスチェーンで30%など、効果の幅は業種によって異なります)。離脱率を下げることは、顧客維持率を高めることと同じ意味です。なぜ利益が伸びるかといえば、長く取引を続ける顧客は、追加購入や紹介を生み、一人あたりの生涯価値(LTV)が高まるからです。

この関係は、LTV(顧客生涯価値) や、その投資対効果を扱った CXのROI でも詳しく解説しています。逆に、顧客が離れると、それまでにかけた獲得コストや将来の利益が失われます。この損失は チャーンコスト として積み上がります。顧客維持率は、こうした「漏れ」を早く察知するための、経営の体温計のような指標です。


顧客維持率が下がる主な原因

顧客維持率が下がる原因の多くは、価格そのものではなく「価値が十分に伝わっていない」ことにあります。表面的な理由の裏にある本当の原因を見極めることが、改善の出発点です。

表面的な理由その裏にある本当の原因
「価格が高い」価格に見合う価値が伝わっていない
「使わなくなった」使い方が定着せず、効果を実感できていない
「他社に乗り換えた」継続する理由・関係性が築けていない
「なんとなく離れた」不満が放置され、静かに気持ちが離れた

特に注意したいのが、最後の「なんとなく離れた」顧客です。多くの顧客は不満を口にせず、黙って離れていきます。この構造は 顧客離脱の本当の原因 で詳しく解説しています。維持率の低下は、こうした「声にならない不満」の積み重ねであることが少なくありません。原因を価格のせいだけにせず、体験のどこでつまずいているかを探ることが大切です。


顧客維持率を改善する4ステップ

顧客維持率の改善は、「測る → 原因を探る → 体験を改善する → 効果を確かめる」という4ステップで進めます。やみくもに施策を打つのではなく、どこで離れているかを突き止めてから手を打ちます。

ステップ1:維持率を正しく測る

まず、自社の顧客維持率を期間を決めて計算します。月次・四半期・年次など、ビジネスの周期に合った単位で継続的に測り、推移を追うことが出発点です。新規を差し引いて、既存顧客の維持を正しく捉えます。

ステップ2:どこで・なぜ離れるかを探る

離脱した顧客が「いつ・どの場面で」離れたかを調べます。契約直後なのか、一定期間後なのか。アンケートや問い合わせ履歴などの VoC(顧客の声) を使い、表面的な理由の裏にある本当の原因を探ります。あわせて、使い始めの定着度・利用頻度・未解決の問い合わせといった利用状況から、離脱の兆候を早めに察知することも有効です。

ステップ3:つまずく接点の体験を改善する

原因が分かったら、顧客がつまずいている接点の体験を改善します。初回利用時の使い方サポート、活用度に応じたフォロー、休眠顧客への働きかけなど、離脱の起きやすい場面を狙って手を打ちます。

ステップ4:効果を確かめ、繰り返す

施策の後、維持率がどう変わったかを確かめます。改善が見られた施策は広げ、効果が薄ければ別の原因を探ります。維持率の改善は一度で終わらず、この循環を続けることで積み上がっていきます。

サンプルで見る改善の流れ

具体的なイメージを持てるよう、架空のサービス事業者を例に、この4ステップを当てはめてみます。

ステップ行うこと分かること・狙い
1. 測る月次の顧客維持率を算出契約2か月目で離脱が多いと判明
2. 探る離脱者に離脱理由を確認「使い方が分からなかった」が多数
3. 改善する初月に使い方サポートを追加つまずきを早期に解消
4. 確かめる翌月以降の維持率を比較効果のある施策を見極める

このサンプルでは「契約2か月目の離脱」という具体的な課題が起点になっています。期間や施策は、自社のビジネスモデルに合わせて調整してください。どこで離れているかを突き止めることで、打ち手が絞り込めます。


よくある質問

Q1. 顧客維持率と解約率はどちらを見ればよいですか?

両方を見るのが理想です。両者は表裏一体(維持率90%なら解約率10%)で、同じ現象を別の角度から見ています。維持できた割合を見たいなら維持率、離れた割合に注目したいなら解約率と、目的に応じて使い分けます。

Q2. 顧客維持率の計算で気をつけることは何ですか?

期間中に獲得した新規顧客を差し引くことです。これを忘れると、新規の勢いで維持率が高く見え、既存顧客の維持状況を見誤ります。期初・期末・新規の3つの数を正しく把握することが大切です。

Q3. 顧客維持率の目安はどのくらいですか?

業種やビジネスモデルによって大きく異なるため、一律の目安はありません。たとえば、継続利用が前提のサブスクリプション型では高い水準が求められやすく、購入間隔が空く商材では低めになりやすい、といった傾向の違いがあります。重要なのは他社との比較よりも、自社の数字の推移を追い、改善できているかを見ることです。

Q4. 維持率を上げる施策は何から始めればよいですか?

まず「どこで離れているか」を特定することから始めます。契約直後の離脱が多いならオンボーディング、一定期間後なら活用支援、というように、離脱の起きる場面に合わせて施策を選ぶと効果的です。

Q5. 顧客維持率はLTVとどう関係しますか?

維持率が高いほど、顧客が取引を続ける期間が延び、一人あたりのLTV(顧客生涯価値)が高まります。維持率の改善は、LTVの向上を通じて利益の積み上げにつながります。


まとめ

顧客維持率(リテンションレート)とは、ある期間のはじめにいた顧客のうち、最後まで取引を続けてくれた顧客の割合です。新規獲得の裏で既存顧客がどれだけ残っているかを映す、事業の健全性を示す重要な指標です。

  • 顧客維持率は (期末の顧客数 − 新規顧客数)÷ 期初の顧客数 で計算する。新規を差し引くのがポイント
  • 解約率とは 表裏一体。維持率90%なら解約率10%で、同じ現象を別の角度から見ている
  • わずかな維持率の改善が 利益に大きく効く。長く続く顧客はLTVが高まるため
  • 維持率が下がる原因の多くは 価格ではなく「価値が伝わっていない」 こと。声にならない不満に注意する
  • 改善は 測る→原因を探る→体験を改善する→確かめる の4ステップ。離脱の起きる場面を狙う

顧客維持率は、新規獲得という「入口」だけを見ていては気づけない「出口の漏れ」を映す数字です。まずは自社の維持率を正しく計算し、顧客がどの場面で離れているかを一つ突き止めることから始めてください。それが、事業の土台を固める第一歩になります。